「士郎、士郎の夢は?」
「正義の味方!」
「みんなが幸せになるようにもっと、もっと強くなるんだ!」

子供の頃、切嗣に良くしていた夢の話。

「士郎の夢は?」
今でも俺の夢は正義の味方だ。

†零の蒼 無限の紅†

気がつけば見たことも無い景色の中にいた。
無限に広がる赤い空。
無限に広がる剣の丘。
その真ん中で俺は立っている。

「何処だ?ここ」

見た事も無い風景。だけど何故か知っている気がした。

「貴様は夢と現実の区別もつかんのか」

不意に後から声がした。
聞き覚えのある嫌味たっぷりな声。

「アーチャー?」
「此処は貴様の夢の中だ」
「俺の夢の中?」

確かに現実の世界でこんな処は知らない。
夢…そうかも知れないと納得できるが、一つだけ疑問が…

「なんで俺の夢にアーチャーが出て来るんだよ!!」
「仕方なかろう、私も好きで出てきた訳ではない」
「じゃあなんで」
「貴様が無意識に引き入れたのだ、逃げる暇などなかった」

??逃げる暇?俺が無意識に?目の前の弓兵は溜息を吐きながら解らない事
を言い出した。

「この状況が嫌なら目を覚ませ」

…目を覚ませと言われても、もう覚めている場合はどうすればいいんだろう
夢なら意識すれば目を覚ませるのに、この夢は…?

「アーチャー無理だ、俺なんか目、覚めてる」
「やはりか」

無意識とは厄介だ…なんて言いながら大きな溜息をつくアーチャー。
どうやらこの状況がどう言うことなのか解っているらしい。

夢か…、この頃よく見ていた夢がある。
子供の頃の夢。
切嗣に正義の味方になると言って、切嗣は苦笑しながら士郎は凄いなぁ
なんて言われる夢。
それは夢じゃなくて現実。昔の話。

目の前には俺の理想がいる。
かっこよくて、強い正義の味方。

反発しても憧れて…。
いつかこいつみたいになれたら

「ならなくていい」
「え?」
「衛宮士郎は正義の味方などにならなくていい」
「な、なんだよそれ、と言うか何で俺の思った事を!?」
「貴様が口に出して言った、私みたいになれたら…と」

言って目を伏せるアーチャー。
口に出して言っていたとは、恥かしいが。そんな事より

「なんでお前、この間から俺の理想を否定するんだよ」

「貴様以外の人の理想や夢には口は出さない
 衛宮士郎の理想だから否定する」

「なんでさ、お前に関係ないだろ?
 正義の味方になるって理想の何処が悪いんだよ」

「本当に関係なかったらよかったのかもな…」

微かな殺気。
俺の夢の中でもアーチャーはアーチャーか。

「お前に何を言われようと俺は正義の味方になるんだ。」

それが俺の起源だから。
切嗣に助けられて、嬉しそうな顔を見て、
自分もいつかこうなりたいと願った。

「間違いだと気付かずに、その理想しか貴様の中にはないのだな」

大きな溜息を吐き、苦笑しながら頭を撫でられた。
殺気はもう無い。
って!!

「な、なにを!?」
「いや、つい」

アーチャーも自分の行動をよく分かってないらしい。

「純粋な零だった時の■■を愛しく感じてな」
「零の…?」

独り言かと思うほど小さな声でよく聞こえなかった。
ノイズが入った見たいに。それを聞いては後戻りできないという言葉。

「此処では貴様を倒せん、さて、そろそろ出たいのだが?」
「出たい?どうやって出せばいいんだよ」
「なに、簡単な事だ。
 貴様の魔力を私が奪い破壊するか、貴様が眠っている間に私が中から壊す
 か、どっちにしろ貴様には気を失って貰わないといけないな」
「…え?」
「そろそろ朝だ、凛やセイバーに気付かれるのはまだ早い」

俺の魔力をアーチャーに奪われて破壊、もしくは、俺が寝てる間にアーチャ
ーが壊す?破壊か壊す?って何を??

「そう難しい選択肢でもないだろう。」
「いや、状況が把握できてない」
「仕方ないな、なら貴様から魔力を奪い、寝ている間に私がこの結界を壊す
 と。これでいいか?」
「え、っと?」
「貴様は大人しくしておけばいいだけだ」

とか言うアーチャーに押し倒された。
なんだこの状況!!


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「まったく、魔術師のくせに魔力供給の仕方も知らないとは」

傍らで寝ている自分の頭を撫でながら呟く。

「零は無限などに憧れるべきではないのに」

辿りつく場所は自分がよく知っている。
だから否定する。
衛宮士郎の理想を。

「士郎、お前は正義の味方になんてならなくていい」

もう一度呟いて、触れるだけの口づけをした。

「さて、真面目に此処から出なければ、もう直ぐ朝だ」

二人そろって居なければ凛に気付かれるかもしれない。
結界を壊す為の呪文を口にする。

−Iam the bone of my sword.

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「朝…?」

昨日は変な夢を見た。
剣の丘でアーチャーと…………。

「うわー!!!」

な、なんて夢を???俺おかしいよな!!?
夢って潜在意識だって言うし、俺、アーチャーの事?
そんな訳あるか!

「おはようございますシロウ、どうしたのですか?朝から大きな声を」
「あ、セイバーおはよう、いや、ちょっと…何でもないから」
「はい、シロウがそう言うなら気にしません」


はぁ、居間で遠坂に会ったら、全て見抜かれそうで気が重い。


(書き逃げ)
(続くかもしれない…)


後書

そんな訳で後書です。
…いろいろ矛盾があります。どうかサラリと読み流して下さいませ。
最大の矛盾は士郎の何処に固有結界を発動できる魔力があったか。ですか?
うう、普通に士郎の夢として書いても構わないと思ったのですが、士郎の中
のアーチャーさんがあまりに良い人で、アーチャーでは無かったのです。
やはり弓と士郎は反発しあってなんぼだと思うデス。